気候変動への対応

TCFD提言への取組

南都銀行グループは、2021年7月にTCFD提言に賛同を表明しました。気候変動が当行グループに及ぼす影響について分析を進め、TCFD提言の枠組みに沿った情報開示の充実に努めます。

  • Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)

ガバナンス

  • 当行グループは、「サステナビリティ基本方針」を策定してサステナビリティに関する課題への対応に取り組んでおり、そのなかで優先的に取り組むべきテーマを取締役会で議論し、マテリアリティ(重要課題)の一つとして「深刻化する気候変動問題への対応」を特定しています。
  • 気候変動への対応については、半期ごとに経営会議で具体的な施策や目標、進捗等について審議し、その結果が経営戦略に照らして適切であるかを取締役会が監督する体制としています。

戦略

  • 当行グループは、なんとミッションである「地域の発展」「活力創造人材の創出」「収益性の向上」の遂行を通じてステークホルダーの皆さまに価値を提供するべく、グループ全体で気候変動への対応に取り組んでいます。
  • 地域の一員として、自らの脱炭素化への取組はもちろん、お客さまの取組についても積極的に支援します。
  • 自らの脱炭素化への取組としては、CO2排出量の削減目標ならびにネットゼロ目標を設定し、再生可能エネルギーの導入や照明のLED化、エコカーの導入等の取組を進めています。
  • また、お客さまのサステナブル経営実現に向けた経営課題解決のコーディネート役を担う「サステナブル支援チーム」を本部に設置し、営業店と連携のうえ、環境関連融資や、ソリューション関連商品の提案を積極的に展開して地域のお客さまとともに経営課題の解決に取り組んでいます。

リスクと機会

  • 1.5℃、4℃を含む複数の公的シナリオを前提に、気候変動に伴うリスクと機会の評価を行いました。時間軸については、短期(5年)、中期(10年)、長期(30年)で分析を行っています。

    ※参考にした公的シナリオ
    脱炭素化が進む1.5℃シナリオ等:IEA NZE2050、IEA APS、NGFS Net Zero2050、IPCC SSP1-1.9、SSP1-2.6
    温暖化が進む4℃超シナリオ:IEA Steps、NGFS Current policies、IPCC SSP5-8.5

内容 時間軸
リスク 移行リスク 気候変動に関する規制強化や税制の変更等に伴う、お客さまの事業・財務状況への影響や、環境規制対応ができていない不動産担保の価値毀損による与信コストの増加(信用リスク)
脱炭素化に向けた技術革新や市場の変化に伴う、お客さまの事業・財務状況への影響による与信コストの増加(信用リスク)
短期~長期
気候変動への対応が劣後することによる、当行の企業価値の低下
(オペレーショナルリスク(風評))
短期~長期
物理的リスク 大規模風水災等の発生に伴う、不動産担保の毀損、お客さまの営業拠点被災に伴う事業停止や事業への悪影響等による与信コストの増加(信用リスク) 中期~長期
大規模風水災等の発生に伴う、当行拠点の被災による対策復旧コストの増加
(オペレーショナルリスク(有形資産))
中期~長期
機会 お客さまの脱炭素化に資する設備投資による資金需要の増加 短期~長期
お客さまの防災対策のためのインフラ投資に対する資金需要の増加 短期~長期
風水災の増加や環境に配慮する顧客行動の変化による、災害に備えた保険商品、環境保全関連の金融商品・サービスの提供機会の増加 短期~長期
お客さまの脱炭素化への取組を支援するソリューション提案等のビジネス機会の増加 短期~長期

シナリオ分析

  • リスクと機会のうち、以下についてシナリオ分析を行いました。
  • 分析の結果、移行リスク、物理的リスクによる財務影響は限定的と評価しています。
  • ただし、一定の前提条件を仮定した分析であることから、引き続き分析手法の高度化や対象範囲の拡大・精緻化に取り組んでまいります。
移行リスク 物理的リスク
分析対象
リスク
規制強化や税制の変更等に伴う、お客さまの事業・財務状況への影響を起因とする与信コストの増加 水害発生による不動産担保の毀損、お客さまの営業拠点被災に伴う事業停止・停滞による与信コストの増加
シナリオ

IEA※1

NZE(1.5℃シナリオ)
APS(2℃シナリオ)

IPCC※2

RCP8.5(4℃シナリオ)
RCP2.6(2℃シナリオ)

分析対象
ポートフォリオ
「電力・ガス」セクター 当行営業エリア内の事業性貸出
分析手法 移行シナリオに基づき、将来の財務影響を予測、追加与信コストを推計 担保物件・お客さまの所在地別に浸水リスクを判定し、担保毀損、売上減少に伴う追加与信コストを推計
分析結果 2050年までの与信コスト増加額
累計で最大約21億円
2050年までの与信コスト増加額
累計で最大約55億円
  • IEA(International Energy Agency):国際エネルギー機関
  • IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル

炭素関連資産

  • 当行の貸出金に占めるTCFD改訂付属書に基づく炭素関連資産割合(再生可能エネルギー発電事業を除く)は以下のとおりです。(2024年3月末時点)
エネルギー 運輸 素材・建築物 農業・食料・林産品
2.5% 3.4% 24.4% 3.0%

当行では日銀業種分類をベースに算定しており、今年度、環境省の業種対応表を参考に業種分類の見直しを行いました。GICS(世界産業分類)を基準とした算定方法とは差異が生じる場合があります。

リスク管理

  • 当行グループは、気候変動への対応を、地域社会の持続的発展にとって重要な課題として認識しています。
  • 当行の気候変動リスクを信用リスクとオペレーショナルリスクに分類し、それぞれALM委員会とオペレーショナル・リスク管理委員会のモニタリング項目に組み込み、リスク管理の高度化を図ります。
  • また、当行グループは2020年10月に融資ポリシーを制定し、新設の石炭火力発電所建設を資金使途とする融資には原則として取り組まないことや、森林伐採を伴う開発等の資金使途に対する融資に取り組む際は、違法伐採ではないか、また環境への影響等について配慮し、慎重に取組可否を検討する旨を、明文化しています。

環境や社会に与える影響が大きい業種・セクターに対する融資ポリシー

環境、社会に対して負の影響を与える可能性のある融資については、慎重に取組可否を判断し、その影響を低減・回避するよう努め、環境・社会問題に真摯に向き合っているお客さまに対しては、地域金融機関として適切な知見の提供や支援を行います。
なお、環境や社会に与える影響が大きいと考えられる次のような業種・セクターに対して融資を行う場合は十分に留意します。

  • 兵器
    戦争等に使用される殺戮・破壊を目的としたクラスター弾など非人道的な兵器を製造している企業への融資は行わない。
  • 石炭火力発電
    新設の石炭火力発電所建設を資金使途とする融資は原則として取り組まない。ただし、国のエネルギー政策等による高効率の発電所建設の場合などは個別案件ごとに慎重に取組可否を検討する。
  • 森林伐採
    森林伐採を伴う開発等の資金使途に対する融資に取り組む際には、違法伐採ではないか、また環境への影響等について配慮し、慎重に取組可否を検討する。

指標と目標

当行グループのCO2排出量(Scope1,2)

  • 当行グループは、CO2排出量の削減に向けて取組を進めており、以下のとおり、今年度より2030年度の削減目標を、2013年度比「▲50%以上削減」から「▲75%削減」へと上方修正するとともに、「2050年度までにCO2排出量(Scope1,2)ネットゼロ」とする目標を設定しました。
  • 2023年度のCO2排出量は5,164t-CO2であり、2013年度から▲48%の削減となりました。
  • 前年度に比べ、エネルギー使用量は減少しましたが、電力等の排出係数の上昇により排出量が増加しました。引き続き、再生可能エネルギーの使用等、排出量の低減に取り組んでまいります。

グループCO2排出量削減目標

2030年度までに2013年度比 ▲75%削減
2050年度までにネットゼロ

2023年度実績

5,164t-CO2(▲48%削減)

当行グループのCO2排出量(Scope1,2)

(単位:t-CO2

内容 2013年度 2021年度 2022年度 2023年度
Scope1 直接排出 都市ガス、LPガス、ガソリン、重油 1,584 1,509 1,517 1,410
Scope2 間接排出 電気 8,341 4,918 3,574 3,755
合計 9,925 6,427 5,091 5,164

当行グループのCO2排出量(Scope3)

  • 当行グループは、以下のとおり、2022年度よりScope3の算定を開始し、2023年度はカテゴリー15の算定に着手しました。
  • その他カテゴリーにつきましては、今後、算定範囲の拡充に向け、算定方法を検討してまいります。

Scope3(単位:t-CO2

2022年度 2023年度
カテゴリー6:
出張
90 87
カテゴリー7:
通勤
2,222 1,965
カテゴリー15:
投融資
未算定 8,895,074
合計 2,311 8,897,125

※カテゴリー15については当行単体を対象としています。

Scope3 カテゴリー15の算定

  • 金融機関にとって投融資による間接的な排出量はScope3が大きな割合を占めており、当行の気候変動への取組において重要な指標と考えています。当行では、カテゴリー15(投融資) にかかる排出量について、PCAFスタンダードに基づく排出量の算定に取り組んでおり、2023年度は国内事業法人向け融資を対象に算定を行いました。
  • 算定結果は、お取引先との対話(エンゲージメント)に活用し、お取引先の排出量削減を支援することにより、脱炭素社会の実現に貢献していきます。また、算定対象の拡大や算定手法の精緻化にも継続的に取り組んでまいります(算定方法の見直しやお取引先の開示状況等により排出量算定結果は今後変動する可能性があります)。
  • 算定対象
    2023年9月末時点の国内事業法人向け融資(プロジェクトファイナンスは除く)
    なお算定に必要な財務データ等が不足する先は対象外としており、算定対象融資は、国内事業法人向け融資の97%をカバーしています
  • 算定手法
    PCAFスタンダードに基づき、投融資先各社ごとに、以下の算定式で算定しています

なお炭素強度は排出量を融資額で
除することで算定しています

  • 排出量の把握
    投融資先各社の排出量は、ボトムアップ方式・トップダウン方式を併用して算定しました
    • ボトムアップ方式:各社が開示する排出量を利用
    • トップダウン方式:各社の売上高に、業種に応じた平均的な排出係数(環境省排出原単位データベースを利用)を掛け合わせて推計

PCAFの定めるデータクオリティスコアは「2.9」となっており、今後も情報精度の向上に取り組んでまいります

  • 国際的なイニシアティブであるPCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)が作成した、
    金融機関の投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量を計測・開示する基準
大分類 小分類 融資額
(百万円)
炭素強度
(tCO2/融資額)
排出量
(tCO2)
エネルギー 石油およびガス 46,700 5.8 272,689
石炭 0 0
電力ユーティリティ 26,676 11.1 295,854
運輸 航空貨物 472 3.9 1,838
旅客空輸 2,768 3.6 9,866
海上輸送 25,904 4.0 104,776
鉄道輸送 69,117 0.3 20,487
トラックサービス 39,596 8.4 331,000
自動車および部品 35,020 1.9 67,011
素材•建築物 金属・鉱業 84,963 16.5 1,404,736
化学 123,719 6.0 746,907
建設資材 16,004 17.8 284,934
資本財 306,827 6.9 2,108,628
不動産管理・開発 239,737 0.3 79,162
農業・食料・
林產品
飲料 20,518 1.2 25,071
農業 491 10.2 4,990
加工食品・加工肉 45,687 8.7 399,568
製紙・林業製品 42,316 6.4 269,846
その他 その他 838,121 2.9 2,467,712
総計 1,964,637 4.5 8,895,074

サステナブルファイナンス

  • 当行グループは、地域やお客さまのサステナビリティ課題の解決に向けた活動を資金面から支援するため、サステナブルファイナンスの実行額について以下の目標を設定しました。
  • 2023年度の実行額実績は1,570億円(進捗率15.7%)、うち環境系ファイナンスは448億円となっています。

サステナブルファイナンス目標

2023年度~2030年度投融資累計実行額1兆円

実績(2023年度)

1,570億円(うち環境448億円)

対象範囲

環境分野・社会分野の課題解決に資するファイナンス

  • 環境分野:再生可能エネルギー・省エネルギー・ZEB・ZEVなど
  • 社会分野:地域活性化・地方創生・スタートアップ・事業承継・BCP対策など

お客さまのSDGs対応を支援・促進するファイナンス

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