探訪 萬葉の世界

萬葉ゆかりの地

阿騎野

東の 野にかぎろひの 立つ見えて
かえりみすれば 月傾きぬ

柿本人麻呂(巻1、48)

奈良県大宇陀町のあたりは、奈良盆地の南東に広がる丘陵地で、万葉集のなかに阿騎野と詠まれた場所だと推定されている。阿騎野は、そのころ宮廷の人々が鹿や兎を追う狩猟場だった。692年、宮廷歌人として軽皇子(かるのみこ)の遊猟に従った柿本人麻呂は、軽皇子の父で今は亡き草壁皇子を偲んで歌い、つづいてこの歌を詠んだ。狩猟の日の夜明け前、太陽が上りはじめるとき、【東の野にあかね色の光がたつのが見え、西をふり返ると、月が傾いて沈もうとしている。】

柿本人麻呂の歌碑が立つ
阿騎野の丘